になって、神田小川町“鶴八”が店仕舞いしたようである。
そう頻繁に使えるわけではないが、2か月に一度とかにふら
りとお酒を呑みに行っていた。突然の閉店でうろたえている
のである。なかなか“他にいい店はいくらでもある”などと
軽々に言えるような店ではなく、代わりとかはないのだ。
メインは店の中心に据えられた菊正宗と賀茂鶴の樽。ここか
ら片口に一度落として正一合の枡にきっちり入れる。枡酒も
いいが、いつも頼んでいたのは硝子のとっくりに二合半の樽
冷だった。
頼むものは季節ごとに大体似たようなもので、酒はまずヱビ
スの生、それから賀茂鶴の樽冷二合半と、興にのった時だけ
たまに菊正宗の一合枡。肴は夏だったらすくい豆腐、冬だと
湯葉つくねか海老芋煮おろし、それに加えて四季折々の白身
の刺身といったところ。
誰にも邪魔されずに地下のカウンターで静かに呑む時間は、
たとえ2時間足らずのものであっても、心も体もリラックス
して家路を辿れるのだった。
さて、本当に困った。どこかに静かでじっくりと酒の呑める
店を見つけなければならないが、これがまたそういう作業が
苦手なので……初めての店に入るのは本当に……当分の間は
使い勝手のいい店を探して彷徨うのだろう。
+今日の富士山……×
★ひだまりのお話★
鶴八はそんなに頻繁には行かなかったけれど、ちょっとしまっておきたい一軒でした。先代(?)のおひげのご主人、最近はお店に出ていらっしゃいませんでしたね。最近といっても、もうずいぶん長くですが。注文と料理のこと以外で客と話すことはなかったけれど、言葉を交わすととても温かみのある方でしたね。
ここに限らずですが、個人のいいお店がだんだん少なくなっているように思います。神保町界隈で料理がおいしくて、ゆったりしたお店、
探さなくては。
季節感に疎い人間にとっては、旬の
物とか季節の物とかを出してくれる
ありがたい店で勉強になりました。
いや、本当に困っています。冗談で
なくです。値段はそこそこ取られま
したが、酒や料理はもちろんそれに
加えて店の雰囲気で通っていたわけ
ですから“代わる店”などおいそれ
とは見つかりそうにありません。
さて、今日はどこに呑みに行こうか
と考え込んでしまいます。