での帰宅となった。
まずは明治座の印象から。ちなみに我が家からは直通の電車で最寄駅
まで行けるという数少ない劇場の一つ。都営新宿線を浜町で下車、地
上に出て遊歩道を50mも歩けば劇場の入口である。
一階客席はエスカレーターや階段で3階まで。今回座ったのは1階席
最後列だったが、比較的傾斜もあるので舞台は見やすかった。休憩時
に3階席も偵察したが、花道も七三まで見えるので新橋より見やすい
かもしれない。
というわけで大西信行脚本の『牡丹燈籠』である、2007年に観た時は
玉三郎と仁左衛門が伴蔵とお峰を七之助と愛之助がお露と萩原新三郎
という配役だったが、二組の夫婦を七之助と染五郎がそれぞれ二役で
という趣向。
それで観ての感想はというと、前回よりおもしろく感じたのだった。
歌舞伎の芝居仕立てになっているとはいっても、大西脚本が濃厚に反
映されているために、染五郎や七之助といった若手が演じることで、
本来の脚本がより一層生かされたという印象である。まずもって、彼
らのキレのある動きが、舞台を生かしたということなのだ。
そんなあたりは、歌舞伎っぽくないという見方もあるのかもしれない
が、脚本の由来からすると今月の上演のほうが“らしい”のである。
勘太郎の圓朝は、まだまだそこまでの貫禄という感じではなく、そこ
は年齢の問題でもあるだろう。
そして『高杯』は、勘太郎のいかにも折り目正しい楷書の踊りを楽し
んだ。彼のお手本が父親であるのは当然のことで、最近は口跡までが
似てきてしまっていて、血は争えないものだとしみじみ思う。ただし
まだまだ父親のように思うがままに芝居をするとか、そういう次元に
あるわけではなく、なぞっているといえばなぞっている段階である。
回数を重ねていくことで、いずれは全体が勘太郎の『高杯』になって
いくことだろう。
終演は20時。劇場から地下鉄の入口までは爽やかな川風に送られた。
浜町から我が家の駅まではちょうど一時間の旅程だった。
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