『ロミオとジュリエット』とまあ、豪華4本立てだったのが、いまや
2本立てとは、少しばかり寂しいヴェルディ・イヤーの演目である。
NHKホールの『リゴレット』はスルーして、ハーディングが指揮を
する『ファルスタッフ』の最終公演を観てきた。
『ファルスタッフ』は観る機会が少ないオペラで、過去に2度。最後
に観たのは1995年NHKホールでムーティが指揮したミラノ・スカラ
座の公演だが、これが印象に残っておらないという……。
さて、ハーディングの指揮はすっきりとシェイプされて洗練された音
楽を楽しむことができた。前回印象に残らなかったのは、ムーティが
問題だったじゃないかと思ったくらいに、全体の見通しがよかった。
シェイクスピアの戯曲にヴェルディが音楽をつけ、それをイギリス人
が指揮する……なかなかに聴き物ということである。スカラ座オケも
手慣れて上等なオペラ伴奏を伸び伸びと展開してくれて大満足。
先々週のドレスデンといい、今回のスカラといい、座付きオケがうま
いと舞台が盛り上がってくれるのだ。
歌手はアリーチェを歌ったフリットリ以外、タイトルロールのアンブ
ロージォ・マエストリ以下は初めて聴く歌手ばかりだった。マエスト
リは、いかにもファルスタッフらしい体躯で豊かな声を聞かせてくれ
たが、ファルスタッフらしい皮肉とユーモアにはもう一頑張りと感じ
た。
ロバート・カーセンの演出は時代設定が1970年代前後と見受けたが、
現代風ということを感じさせることなく、過去に観た時にはわからな
かった『ファルスタッフ』を理解させてくれたような気がする。
それで1995年のムーティ『ファルスタッフ』がわからなかったのは、
彼のユーモア感覚が希薄だったせいではないかと責任転嫁しておく。
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